□予選リーグ 第3試合(9月21日 12:10〜13:40)・第4試合(9月21日 14:10〜15:40)下流エリア

新たなエリアへ。選手に緊張が走る。
 下流エリアはABブロックのおとり配布場所辺りが五松橋上下専用区の下限になっている。ここは木曜、金曜と自身で少し竿を出してみたが掛けることができなかった。ヘチには小型の鮎がフラフラと居るのは確認できた。この厳しいエリアを名手たちはどう攻略するのか。これもまた興味深いものであった。

〈第3試合 Aブロック〉
 Aブロックは五松橋直下の急瀬が落ち込んだ付近に東選手、その下手にあちこち動きながら垢の状態を確認し最終的にポジションを決めた楠本選手、その下に井上、小沢聡、遠藤選手と並ぶ。おとり配布場所の前には三嶋選手。広いザラ瀬が落ち、トロになっていくところだ。大きめの石もあり有望に見える。
 12:10、第3試合がスタートした。気温は31℃まで上昇していた。水温もここでは19℃ある。山からの風も止み、垢と濁り以外は良い
条件になっていた。

悩みながらも自分の釣りを的確に見出す小沢聡選手
 大きくオバセを出して掛かるのを待っていた東、楠本両選手が掛けた。小型の白い鮎だ。井上、小沢聡選手が二人の前後に移動する。三嶋選手は少し立ち込んで岸側を探っている。井上選手が移動した先は地元の名手が「あそこが一番いいところ」と言っていた場所だった。そこで我慢の釣りで込6匹として1位を獲得、小沢聡選手は細かく動きながら終盤掛かるところを見つけて井上選手に追いついた。楠本、三嶋選手もこの厳しい中2匹を掛けて3位を分けた。東選手はその後苦戦し込3匹、遠藤選手は型を見ず。


井上選手は全国から強者が集まる中日スポーツ杯で3年連続シードを獲得した事実は技術力の高さの証明だ。8.5mの竿をチョイスして釣果を伸ばしたが。
 
三嶋選手は先入観のない釣りが印象的だった。立ち位置も
変幻自在だ。                    

楠本選手の鮎を追い求める野生のようなまなざしは印象に残った。
〈第3試合 Bブロック〉
 Bブロックは上限から続くトロから流れが分かれ、大きな中州に絡ん
だ部分に残り垢の希望が持てる場所があったようだ。浅場ではうっすらと石も見え、狙いを付けやすくなっていた。見えさえすればこっちのものとばかりにベテランの森永選手がザラ瀬のなかの掘れ込みにおとりを止めて掛けていく。今大会ただ一人の単線メタルを使いピンポイントで止めて待っているようだった。

 その右岸対面では沓澤選手が掛け返す。RSソリッドに1号程度のおもりを付けひざ下ほどのザラ瀬で止めて待つ釣りだ。入念な下見から導き出した超短軸早掛けタイプの7〜7.5号をチラシにして使っていた。追いの弱い鮎も絡め取っていったが、バレもここでは多く出たようだ。沓澤選手はのちにここでの戦いが一つのキーポイントになったと語っている
。 その下流でスタートダッシュを決めた志賀選手が追加に苦労していた。森永、沓澤選手が待つのに対し動いて行ったことが裏目に出たか。

濁りは名手森永選手にとって最大の敵だった。
 島選手はさらに下流の頭大の石が流れから半分出ているようなチャラを攻めていた。雑木もあり非常に攻めにくそうなところだが、自信に満ちた竿操作で小型の鮎を掛けていく。

 終わってみればBブロックは合計51匹と予想以上に釣れた。島、森永選手は会心の込10匹、沓澤選手は杭が残る込10匹で3人が1位を分けた。玉木、盛合、志賀選手が込8匹、7匹、6匹と続いた。

〈第3試合 Cブロック〉
 Bブロックの終盤にあるトロ場は北陸道下で2つに分かれ、それが落ち込むあたりにはもう一筋細い流れが交わる。その北陸道から福松橋までの短い区間がCブロックだ。中州まわりには垢残りの可能性が有りそうに見える。その可能性に賭けて横山選手が恐ろしいほどの圧力で流れる激流をその恵まれた体躯を活かして見事に渡っていく。それに続き

名手森永選手の好釣に追随する沓澤選手
瀬釣りを得意とする塚本選手も首まで浸かりながら渡河していった。ここは大きく左へカーブしているため、流れの筋は右岸側になっている。右岸から渡河する分には半分を過ぎればたどり着けるが、問題は帰りだ。近づくほどに深く強くなる流れは渡河の高い技術を要求される。
 その技術を活かして渡河した横山選手が掛ける。渡河をあきらめた小澤剛、松田、望月、八木沢選手は短い区間に並んで我慢の釣りだ。ここでこの状況を冷静に判断し、それにただ一人適応したのが松田選手だった。増水避難パターンと判断しヘチ釣りに徹した。松田選手が信頼するヤナギ針はこのような状況でも鮎を絡め取ってくれた。
 このブロックでは対岸に渡った2名と松田選手だけが釣果を得た。小澤剛、八木沢両名手であってもお手上げの状態だった。対岸で貴重な釣果を得た塚本選手であったが、帰りの渡河は自ら無理と判断し、審判に告げた。折角の釣果をタイムアウトにより失ってしまったものの、冷静に限界を判断し渡河を諦めたことは、非常に勇気がいることだったに

避難鮎を狙う小澤剛選手。今回の九頭竜では彼本来の釣りが見られなかった。
違いない。塚本選手はその後、現役消防士の斉藤選手、渡河技術に長けた横山選手の適切な誘導で安全に渡河し戻ることができた。

〈第3試合 Dブロック〉
九頭竜川は北陸道をくぐる辺りから下流域の様相に変わる。石が細かくなり、砂も多い。当然出水では石が動き、砂で洗われ垢はきれいに流されている。かすかに残る垢を探して待機する鮎を如何に捉えるか。
 Dブロックで捉えたのはベテランの高尾選手だった。わずかに出来た瀬脇のタルミを釣って込7匹とし3試合連続の1位を獲得した。ここでしぶとく2位に入ったのが塩野選手。状況が厳しいほどその本領を発揮するかのようだ。普段松田選手とともに切磋琢磨する高木選手も貴重な釣果を得て3ポイントを獲得した。斉藤、加藤、矢吹の3選手には残念ながら鮎は掛かってくれなかった。

3年連続のファイナルで安定感がでてきた八木沢選手。厳しい状況でも釣果を重ねた。


 気温、水温とも第3試合がピークだったようで、第4試合が始まる14:10には気温水温とも第3試合と変わっていなかった。風だけは川下からの弱い風に変わっていた。1日で4試合を行う大会は少ない。広いエリア設定、多い水量、濁り、風、日中の暑さのなか、集中して戦った選手たちは疲労感も出ている。しかし疲れたとは言っていられない。この第4試合をいい形で乗り切って明日へつなげたいと誰しも考えていた。

多彩な釣技を持つ松田選手。迷いがない。
〈第4試合 Aブロック〉
Aブロックでは沓澤選手が初めて単独で1位を獲得した。追う鮎のいないこのブロックは最後まで選手たちを苦しめた。

〈第4試合 Bブロック〉
 Bブロックでは第3試合に島選手が1位を獲得したポイントで楠本選手が思い通りの釣りを展開していた。愛竿スペシャルAは完全に腕の延長と化し、ピンポイントを打っていく。九頭竜の西日を背にしても自信に満ち溢れた釣り姿は大きく輝いて見えた。G杯を掴み取ったときも同じようなオーラを発していたのだろう。楠本選手は10分ほど残しながらも込15匹と他を圧倒した。
 第3試合で森永、沓澤選手が好釣果を得たポイントは開始直ぐには調子が出ていなかったようだ。「止めてぶらしながら待つ」ことに気付く選手はいるのか。

チャラで飛ばす楠本選手。強い。

 本筋で時間を費やした井上選手はこのポイントに来て込7匹まで押し上げた。井上選手は本来、分流やチャラは最も得意とする。このエリアは下見をしていない選手がほとんどだったが、井上選手もその一人で、分流の存在すら分からなかったのだ。後にこの40分を非常に悔やんでいた。周辺で釣っていた遠藤、東選手も込7匹、6匹と釣果を得ていた。三嶋選手の姿は確認できなかったが込8匹を検量所に持ち込んでいた。小沢聡選手もこのポイントに途中でやってきた。ちょっとした掘れ込みで待つパターンを掴んでからは入れ掛かりとなる。

〈第4試合 Cブロック〉
Cブロックは第3試合を受けて急遽エリア変更となった。Dブロックのさらに下流になった。広大な流れに潜む十数センチの鮎を求めて選手は散って行った。

最年長の遠藤選手は終始落ち着いた釣りが印象的だった。

 ここでも掛けてきたのが塩野選手だ。一体どうやって鮎を探すのか。33歳と参加最年少選手であるのに安定感がある。込6匹で1位獲得。第2位も穴のない高木選手。じわじわと順位を上げてきた。斉藤、加藤、矢吹選手は揃って込3匹で3ポイントを分けた。ここで唯一釣果が無かったのが高尾選手。3試合連続1位からの6位は折角築いたアドバンテージを消してしまった。

〈第4試合 Dブロック〉
 Dブロックでは第3試合までのうっ憤を晴らすかのように小澤剛選手だけが掛けていた。第3試合で高尾選手が掛けていた付近だ。岸に立ち極手前を縦に探っていた。込11匹は占有率が今大会最高の47.83%となった。他の5選手の合計が12匹だったのだから如何にずば抜けていたかが分かる。トロ場に並んでいたほかの選手は一様に苦労したが、ヘチ

恐ろしいほどの集中力でBブロックで次々と鮎を掛ける小沢聡選手
に拘っていた松田選手は小澤剛選手のパターンを見て移動し執念の1匹を掛けていた。八木沢選手は徐々に立ち込みながらトロを探っていたが、気持ちを切らすことなく1匹を掛けた。この1匹で松田選手と2位を分けた。